zeeb0t(Anthony Ziebell)が実践した、AIスクレイピングで開発者の手間を減らす方法
zeeb0tことAnthony Ziebellは、InstantAPIを単独で立ち上げた開発者だ。HTMLセレクタ不要でWebページを構造化JSONに変換するという切り口で、スクレイピングの設定負荷を下げるプロダクトを組み立てた。価格は1,000ページあたり2ドルを前面に出し、JavaScriptレンダリングやCAPTCHA対応まで含めたシンプルな料金設計で差別化を図っている。
- 非公開
- SaaS
- 生産性/汎用
- コミュニティ
- Qwen3
概要
zeeb0t名義で活動するAnthony Ziebellは、InstantAPIの創業者であり、Hacker Newsでは自らをソロファウンダーと説明している。InstantAPIは、任意のWebページをHTMLセレクタなしで構造化JSONへ変換するAPIとして打ち出されており、欲しいデータの形を例やJSONスキーマで渡すと抽出結果を返す設計になっている。
本人の投稿やプロフィールを見ると、20年以上の開発経験を持ち、Apify上でもデータ抽出を簡単にする取り組みを続けている。加えて、Temple & WebsterでGen AI領域のR&D責任者を務めていることも確認できる。個人開発の延長線ではなく、長年の実務経験と生成AI活用の知見を持ち込んだプロダクトと見るのが自然だ。
ビジネスモデル
InstantAPIの中核は、Webスクレイピングの実装負荷を下げるSaaS型APIだ。利用者はページURLと欲しい出力形式を指定するだけで、構造化データを受け取れる。投稿内容や関連資料では、JavaScript対応、CAPTCHA処理、回転プロキシ、ページネーション処理、リンク抽出、Google検索結果の取得、MCP対応といった機能が並んでいる。
この構成のポイントは、従来のスクレイピングで発生しがちな「CSSセレクタ保守」「サイトごとの例外処理」「レンダリング設定」を利用者から隠していることにある。単に抽出APIを売るのではなく、壊れやすい実装部分をまとめて肩代わりすることで、開発者や非エンジニア寄りの利用者にも届く商品設計に寄せている。
料金面でも特徴がある。2024年8月時点のHacker News投稿では1ページあたり0.02ドルの有料化に触れていたが、その後の紹介記事や2025年の投稿では1,000ページあたり2ドル、すなわち1ページ0.002ドル相当の価格を前面に出している。価格の変遷はあるものの、最終的には低単価・従量課金を強く訴求する方向へ調整したことがうかがえる。
収益規模
公開されている収益データは確認できなかった。MRRや月商の具体的な数字、顧客社数、年間売上の明示は見当たらない。
一方で、Apify上の公開プロフィールでは月間ユーザー数81、累計ユーザー数1.4Kという数字が見える。また、本人はHacker Newsで「本番ワークフローの重要な一部として使われている」と説明しており、実験段階だけでなく業務利用の手応えは得ているようだ。ただし、これらは収益金額そのものではないため、事業規模を金額ベースで断定する材料にはならない。
学べるポイント
第一に、複雑な技術を「入力はURLと欲しいJSONだけ」という形に圧縮した点が学びになる。スクレイピング市場には高機能な競合が多いが、利用者の悩みは高機能そのものより設定の面倒さにある。InstantAPIはそこを正面から削っている。
第二に、価格のわかりやすさを製品メッセージの中心に置いた点も見逃せない。機能比較ではなく、1,000ページあたり2ドルという具体値で判断させることで、導入前の認知負荷を下げている。技術商品でも、買い手はまず料金の理解しやすさで足を止めることが多い。
第三に、創業者自身がAIをプロダクト内部でも運営面でも使っている。Hacker News上では、自己ホストしたQwen3を使い、負荷分散やフォールバックとしてOpenAIの複数モデルも併用していると説明している。さらに、返答前にAIが自己批評する仕組みを組み込んだとも述べており、単なる“AI搭載”ではなく、品質補正まで含めて設計している点が特徴的だ。
日本での再現可能性
日本でも一定の再現余地はある。特にEC監視、求人収集、営業リスト整備、不動産情報の収集、メディア監視といった用途では、取得対象サイトごとに細かなスクレイパーを組む負担が大きい。そのため、「まず欲しい項目を定義すれば取れる」という体験には需要がある。
ただし、そのまま同じ形で広げるには注意点もある。日本市場では法務・利用規約・取得データの扱いに慎重な法人が多く、単に抽出精度や安さだけでは採用が進みにくい。監査ログ、国内向けサポート、利用ガイド、対象業界別テンプレートまで揃えたほうが受け入れられやすいだろう。
また、日本で再現するなら汎用APIとして売るだけでなく、用途を絞った縦型展開のほうが勝ちやすい。たとえば「EC価格監視専用」「不動産物件の差分取得専用」といった形にすれば、導入企業は精度評価をしやすくなる。InstantAPIの発想は汎用だが、日本での販売戦略はより業務特化型に寄せる余地が大きい。
出典
- https://news.ycombinator.com/item?id=44024840
- https://news.ycombinator.com/item?id=41221007
- https://news.ycombinator.com/user?id=zeeb0t
- https://apify.com/zeeb0t
- https://web.instantapi.ai/blog/troubleshooting-common-web-scraping-issues/
- https://web.instantapi.ai/blog/web-scraping-in-the-publishing-industry-automating-content-aggregation
- https://web.instantapi.ai/blog/using-web-scraping-to-enhance-customer-relationship-management-crm
コメント
InstantAPIの面白さは、AIスクレイピングそのものよりも「スクレイピングの面倒をAPIの裏側へ押し込む」設計にある。技術的に派手なことを語るより、設定不要・低価格・業務投入可能という順番で価値を見せているのがうまい。日本でも、AI活用を前面に出すより、面倒な定型作業をどれだけ短時間で置き換えられるかに翻訳できる事業が強そうだ。
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